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椿の歌 萬葉集4152番 撮影:小沢昭巳 つばきの花の写真
撮影:小沢昭巳
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よみかた(現代仮名遣い)

おくやまの やつおのつばき つばらかに きょうはくらさね ますらおのとも さくしゃ・おおとものやかもち まき十九 4152ばんか

奥山の 八つ峰の椿 つばらかに 今日は暮らさね ますらをの伴 作者・大伴家持 巻十九・4152番歌

現代語訳

奥山の峰々に咲く椿のように、心ゆくまで今日は楽しい一日を過ごしてください。立派な男たちよ。

解説

 天平勝宝(てんぴょうしょうほう)2年(750)の旧暦3月3日によまれた歌。その日、越中(えっちゅう)の国守館(こくしゅかん)では、上巳(じょうし)の宴(えん)がもおこなわれた。その時の歌が3首(しゅ)、万葉集には残されているが、そのうちの1首。

 「奥山の八つ峰の椿」は、「つばらかに(十分に、思い残すことなく)」を導き出す序詞(じょことば)。
 宴に参加した男たち(ますらおのとも)へ、奥山にたくさん咲いている椿の花のように、今日は宴(うたげ)を十分に楽しんでください、と国守(こくしゅ)だった大伴家持(おおとものやかもち)が歌をもって呼びかけたのである。
万葉の植物・つばき

 椿は、葉が常緑の高木。日本原産の植物。室町時代以降園芸品種が多い。万葉集の椿は、南方系のヤブツバキ、あるいは雪国に多いユキツバキを指す。「椿」という字は国字で万葉集が初出。中国の「椿」はセンダン科のチャンチンを指し、隋・唐の時代には「海石榴」と表した。万葉集では、「海石榴」「椿」ともにつかわれている。『古事記(こじき)』では王に照り映える呪的(じゅてき)な植物として登場(記57)。万葉集では大宝(たいほう)元(701)年の紀伊国(きいのくに)行幸(ぎょうこう)の際に椿をうたった例や、市に生える椿がよまれている。山に自生する様をうたう例が多い。庭園に移植された椿もよまれている(巻二十・4481)。越中万葉歌では、巻十九・4152、4177番歌でうたわれている。
用語

国守館(こくしゅかん)
国守(今の県知事相当の職)の公邸のこと。

上巳(じょうし)
節句の一つ。3月最初の巳(み)の日のこと。後に、ひなまつりとなる。

序詞(じょことば)
和歌や古文(こぶん)などで、意味や言葉の音のイメージから、別の言葉を導き出すために前に置く言葉。枕詞(まくらことば)は5音の1句なのに対し、序詞は2句以上にわたる。

行幸(ぎょうこう)
天皇が外出すること。「みゆき」ともいう。
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